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2007-07-18

「タイトル未定な朝比奈の物語」(仮題) その1

……結局、タイトルは思いつきませんでした(^^;。
 
というわけで、朝比奈の小説・1回目です。
かなり前から、やつの入門から引退までを書いてみたいなーとぼんやり思ってましたが、自分の知識(主にプロレスの)不足等の不安もありまして、なかなか踏み切れませんでした。が、ゲーム内で実際に引退を見て、やっぱり形にしてやりたくなってしまい――とりあえず冒頭を書いてみた次第です。今回はまだプロレス入門すらしてない、高校時代のお話ですけど、よろしければ見てやっていただけると嬉しいです。
 
ではでは、「続きを読む」からどうぞ。

 
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 ――あけましておめでとう。はい、美香ちゃん、お年玉。
 ――美香ちゃん、また可愛くなったわね。
 
 ――あ、優香ちゃんもあけましておめでとう。はい、お年玉。
 ――優香ちゃん、また背が伸びた? いつも元気でいいわねー。
 
 
 
 子供の頃。
 正月になると親戚の伯母たちが家にやってきた。
 
 伯母たちは、自分と妹にお年玉をくれた後、いつも声をかけていった。
 
 妹には、また可愛くなったと。
 自分には、いつも元気だねと。
 
 
 
 だから。
 子供の頃からわかってたんだ。
 
 自分は、「可愛く」は無いんだってことは――――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
               1
 
 
 
「ゆーか――――!」
 頭上から降ってきた声に、朝比奈優香は足を止めた。
 背後の校舎を振り仰ぐ。声の主は――――居た。ずらりと並ぶ窓の1つから、二ノ宮真里が身を乗り出している。
「ちょっとぉ、なんで先帰っちゃうのーっ?」
 どうやら機嫌が悪いらしい。ここからでは表情はわからないが、声が尖っている。
「なんでって……お前こそ、先に帰ったんじゃなかったのか?」
「え? 何? 聞こえなーい! もう、すぐ行くからそこ動かないでよー!」
 こちらの声は、向こうの耳にまでは届かなかったようだ。スカートを翻し、真里の姿が窓の奥に消えた。
 ――ちぇ。
 頭をかき、朝比奈は校門の脇へと移動した。ほどなくして真里が昇降口から姿を現す。
「お待たせーっ」
 勢いよく駆けてくると、そのまま真里は朝比奈の腕に自分の腕を絡めてきた。小柄な真里に引っ張られ、朝比奈の身体が左に傾く。
「こら、重てぇよ。放せって」
「だーめ。待っててって言ったのに先帰ろうとしたんだから、このくらい我慢する!」
「だからさ、オレはちゃんとそっちの教室覗いたんだって。なのにお前がいねぇから、てっきり、そっちが先帰ったのかって……」
 そう言うと、真里の目がまるくなった。
「えー、嘘ぉ? ちゃんとクラスの子に伝言頼んどいたのに……もーっ、あの子たち、伝えてくんなかったんだ。長谷ちんに呼ばれたから職員室行ってたの」
 長谷というのは真里の担任の名だ。
「なんだ、呼び出しかよ。何やったんだ」
「何もしてないってば。進路指導。優香んとこも調査の紙、配られたでしょ?」
「あー……」
 そう言われれば確かに、ちょっと前に進路希望の調査用紙が来ていたような気がする。どこにやったか忘れたが、適当にどこかにねじ込んだはずだから鞄の底をさらえば出てくるだろう。
「それよりさ。シカトして帰ろうってしたわけじゃねーってわかったろ? そろそろ放せよ。人が見てんだろ」
 しがみつかれている腕を軽く振る。
 いつのまにか2人は学校近くのショッピングセンターまでやってきていた。腕を組んでじゃれ合う自分たちに、さきほどからすれ違う人々がちらちらと視線を送ってくるのがわかる。
「なんでよ。気にしなきゃいいじゃない」
「こういうのはカレシとやれっての。こないだコクられたって言ってたろ」
「あー、あれね…………やめちゃった」
「――は?」
 朝比奈は思わず瞬きした。
 真里が後輩の男子生徒から告白されてつき合い始めたと言っていたのは先月のことだ。それからまだ3週間ほどしか経っていないのに、もう別れた?
 呆れて見遣ると、非難されたと感じたのだろう、真里が唇を尖らせた。
「だってぇ……、あれから1回お茶してみたんだけどさ、なんかピンとこなかったんだもん」
「お前な、前のオトコん時も、んなこと言ってなかったか?」
 そうだっけ? と首をかしげる真里。
「んーなことばっかやってっと、そのうち誰もコクってくんなくなるぜ?」
「別にいいよ。そん時は――――優香がいるしー?」
 からかってやると、真里は一瞬頬を膨らませたが、にっと笑んで逆襲してきた。
「人をオトコの代わりにすんなっ!」
「あはははははー」
 思わずこづいてやろうと右手を上げる。が、真里の方が素早かった。すかさず腕を離し、笑いながら朝比奈の手の届かないところまで逃げ出す。
 ――ちぇ。
 その後ろ姿を眺め、朝比奈はまた小さく舌打ちした。
 いいよな、こいつは。
 振り返る彼女に気づかれないよう、溜息をつく。
 標準よりも小柄な身体、ぽっちゃりとして柔らかい二の腕――本人は気にしてやたらとダイエットしたがるが、朝比奈の目からすればその必要があるようには思えない――、いかにも少女らしい可愛らしい顔だち。いずれも、自分には持ち合わせのないしろものだ。
 いや。
 持ち合わせがないどころか、自分はむしろその正反対だ。
 幼い頃からすくすくとよく伸びた背丈は、中学になってもとどまるところを知らず、いつのまにか170cmを超えてしまっていた。おかげで女の子らしいスカートなど似合うわけもなく、いつもパンツばかりはいている。さらに追い打ちをかけているのがこの顔の造作だ。吊り上がった眉と細い目はお世辞にも可愛いとは言い難く、おまけに(自分では意識していないのだが)無愛想だと言われる表情も手伝って、教師や先輩から「睨んでいる」と誤解されたことは一度や二度ではない。
 別に、女の子らしい可愛い格好をしたいなどと思ったことはない。むしろフリルだレースだピンクだといったふわふわした雰囲気は苦手な方だ。
 だが。
 初めから、そういう世界から弾き出されてしまっているというのは…………あまりいい気分のものではなかった。
 ――………………。
「優香ぁ?」
 不意に声をかけられ、朝比奈は我に返った。目の前で真里が覗き込んでいる。
「どしたの?」
「あ……ああ、いや。なんでもねぇよ」
「そう?」
 怪訝そうに首をかしげた真里だったが、深く追求してはこなかった。その代わり、いたずらっぽい笑みを浮かべ、袖を引っ張る。
「ね、お財布、余裕ある?」
 くいくいと後ろを指してみせる。
 そこには2人がちょくちょく入り浸っているファーストフードの看板があった。どうやら今日も寄っていきたいらしい。
 ――しょうがねぇな。
 頭の中で次のバイト代が入るまでの日にちを計算し、朝比奈はうなずいた。
「……ちっとなら、な」
 
 
 
               ◆
 
 
 
 店内には何組かの客がいたが、幸いいつも自分たちが座る席は空いていた。トレイにアップルティーとブレンドコーヒーを乗せ、隅の席に陣取る。
「長谷ちんも融通効かないんだよねー」
 シロップの蓋を剥がしながら、真里がぼやく。
 いつのまにか、真里が呼び出されたという進路調査の話題になっていた。先日配られた調査用紙に、真里は『第1志望:東京の学校  第2志望:どこかは未定  第3志望:これから考える』と書いて提出したのだという。
「したら、『真面目に書け!』ってお説教だもん。冗談通じなさすぎ」
 愚痴りながらアップルティーをすする真里。
 思わず朝比奈は苦笑した。
「普通絞られっだろ、そりゃ」
「優香までひどいー。本当のことだもん、嘘書くよりいいじゃない」
「だからって、正直に書き過ぎなんだよ」
「提出もしないで放ったらかしにしてた人に言われたくないですー」
「あのな。オレだってシカトしてたわけじゃねぇっつの。忘れてただけだって」
「おんなじでしょ」
 一言で斬り捨て、真里は頬杖をついた。
「でもさ。――――マジな話、優香は卒業したらどーすんの?」
「ん? …………ん……」
 投げかけられた問い。
 すぐには答えられず、朝比奈はコーヒーの水面を見つめた。
 高校2年の2月。
 別段、何かを求めて入った学校ではない。周囲の連中は皆行くから、今すぐ将来を決める気にもなれないから、手近に行けるところがあったから……高校に入ったのはその程度の理由でしか無かった。流されるように選び、そして与えられた3年間の猶予期間。
 だが、それももうすぐその三分の二が終わろうとしている。後1年と少し経てば、自動的に今居る場所を出なければならない。
 でも。
 その後はどうすればいいのか。
 どこへ行き、どこに居場所を見つければいいのか…………ほんの1年先のことなのに、その未来図はまだ見えてはこない……
 
 
 ……と、その時だった。
 
 ぼんやりと店内に視線をさまよわせていた真里が、ふと瞬きをした。次いで、その瞳が大きく見ひらかれる。
 ――……?
 怪訝に思って振り返り――――そして、朝比奈も目をまるくした。
 店の入り口から、女性が一人、こちらへと歩み寄ってきている。
 その姿には覚えがあった。
 濃い青紫のジャージをまとった長身の女性。赤みのかった髪は短く切られ、無造作に後ろへとなでつけられている。今風のファッションとはおよそ無縁な飾り気のない姿だが、それがかえって女性の野性的な精悍さを際だたせていた。そして、微かに笑みを浮かべた涼やかな瞳。
「……ここにいたのか。二人とも元気そうだな」
 女性としては硬質な声が響く。
 ガタンと音をたて、真里が立ち上がった。
「嘘ぉっ……先輩!? なんで? えーっ、いつ帰ってきたんですかっ?」
 声をあげ、女性に飛びついていく。女性は苦笑を浮かべつつ、久しぶりに会った後輩を抱きとめてやる。
 ――マジかよ……。
 やや呆然としながら、朝比奈も立ち上がった。
 この人に最後に会ったのは3年前のことだ。
 中学時代、真里と揃って世話になった。手のかかる後輩2人をよく面倒みてくれて――――そして、「かなえたい夢があるから」と言い残し、上京していった先輩。
 離れていた3年分、大人っぽくなっている。しかし、瞳に浮かぶ表情は昔と変わらない。
 その姿を見つめ、朝比奈はつぶやいた。
「……霧島さん…………」
 
 
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とりあえずこの辺で、1回目はおしまい。
 
さすがに夏コミ原稿に全力投球しないとまずい時期になっちゃったので(^^;、この続きはその後になります。どうもすみません。(修羅場前に、どうしても1回目だけは書いてアップしときたかったので……)
 
 
 
P.S.WEB拍手押してくださった方々&コメント下さった方、ありがとうございました。
 
>おお……朝比奈の引退話、むっちゃ楽しみです!有終の美を飾るタイトルも会わせて楽しみにしておりますっ/HIGE
はうっ、すみません、書き方が紛らわしかったですね。ご覧の通り、引退話ではなく、むしろ入門編に近い感じです(^^;。でも、できれば引退まで書ければいいなぁと思ってはいるんですが、そこまで行ける、かなぁ……(不安)。

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コメント

なんと、朝比奈伝GIRL……ッッ
丁寧な空気感がお美事です。
決して武闘派な訳でもない彼女が、これから如何にして
プロレスラーという修羅道へ至るのか、
期待させて頂きますッ

投稿: STR | 2007-07-19 01:52

>STR様
コメント、ありがとうございます(__)。
そうなんですよね、この話だと、朝比奈は特に格闘技やってたわけでもなく、プロレスに対する興味もさほど……な状態だったりします。次の回でプロレス入りを決意する予定なので、アップしたらまた読んでやっていただけると嬉しいです。

投稿: 水瀬 | 2007-07-19 18:07

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