レッスルエンジェルス語り

　
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２０××年４月某日
　
今日、事務所で仕事していると、藤島瞳ちゃんが缶コーヒーを持ってきてくれた。
「あれ、ありがとう」
「いいえぇ、こないだ引越手伝うてもらいましたし」
先日、ようやく寮の受け入れ準備ができたので、瞳ちゃんも引っ越してきたのだ。今のところ住んでいるのはまだ瞳ちゃんだけだけど、後一ヶ月もしたら他の女の子たちも入ってにぎやかになることだろう。
「それ、応募書類ですのん？」
机の上に広げてあった書類を覗きこむ瞳ちゃん。
新聞や雑誌に新人タレント募集の広告を出したところ、何通かの応募があった。全員をすぐ受け入れるわけにもいかないので、書類審査と面接で絞り込む予定になっている。霧子先輩が昨日書類審査を終えたので、合格の子とそうでない子、それぞれに用意した書類を送り返さなければならない。
「ふぅん……この子なんかえらい可愛いなぁ」
「あ、ダメだよ、書類見ちゃ。やっぱり気になるの？」
「そら、将来ライバルになるかもしれへん子らやし？」
くすりと笑う。……なんか、目はマジだった気がするんだけど……いや、あまり深く突っ込まないでおこう。
「今日は、霧子さんはお出かけですのん？」
幸い、瞳ちゃんの方から話題をそらしてくれた。うん、と僕もうなずく。
今日は霧子先輩は出張で広島まで行っている。あちらでいい素材がいると聞いてスカウトに向かったのだ。なんでも、ミスコンテストで優勝した子だとか。
「へぇ、ミスコン。広島のやったら、ミス牡蠣とかミスおたふくソースとか、そういうんですやろか」
「おたふくソースねぇ。それなら、ミスお好み焼きとかの方がありそうじゃない？」
と話しているところに、ちょうど携帯電話がかかってきた。この着メロは先輩だ。
「はい、都築です。はい。…………そうですか、ＯＫもらえましたか。良かったですね。……はい。わかりました。寮の部屋の方、準備しときます。――ん？」
肩をつつかれて振り返ると、瞳ちゃんが目配せしている。
苦笑して僕はつけ加えた。
「あー、すみません先輩。その～……その子が優勝したっていうミスコンって、何のミスでしたっけ？　ああ、はいなるほど。いや、たいしたことじゃないんです。じゃ、気をつけて帰ってきてください」
電話を切ると、瞳ちゃんが興味津々な表情で覗きこんでくる。
僕は携帯をたたみながら答えた。
「『ミスもみじまんじゅう』、だってさ」
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藤島ちゃんがちょっと黒くなってしまったかも(^^;。
　
　
　
　
Ｐ．Ｓ．ＷＥＢ拍手押してくださった方、ありがとうございました。