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2009-04-18

「タイトル未定な朝比奈の物語」(仮題) 3回目

この間アップしたお話の続きです。
 
では、「続きを読む」からどうぞ。

 
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          ◆
 
 
 夕食後、後かたづけを終えた朝比奈のところへ美香がDVDを持ってきた。
「姉ちゃん、これ、言われてたやつ。今見る?」
「サンキュ。そうだな、観ちまうか」
 DVDのケースを開けると、メモが1枚挟まっていた。手書きで選手の名前らしいものが書き込まれている。
「これは?」
「あ、それはカード表。どの試合に誰が出るか書いてあるの」
 へえ、と眺める。見ると、メモの真ん中付近には「霧島レイラ」の名前もあった。
「…………」
 その名を見つめてから、朝比奈はDVDをスタートさせた。
 CGによるオープニングの後、会場の風景が映し出された。真ん中に据えられた白いリング。四方の観客席はほぼ満員だ。
 その光景にかぶせるように、放送席のアナウンサーとゲスト解説者が妙にハイテンションな口調で喋り始めた。2人の掛け合いに合わせてVTRも流れ始める。記者会見らしい席上での挑発の応酬、選手のインタビューや練習風景……どうやら、この大会に至るまでの経緯を紹介しているらしい。まるで「前回までのあらすじ」だな、と朝比奈はくすりと笑った。
 やがてカメラは会場へと戻り、Tシャツやジャージ姿の選手たちが入場してくる姿を映し出した。
 ――へー、思ったより細っこい奴が多いんだな……。
 プロレスというくらいだから、さぞかし体格の良い女性が揃っているのだろうと思っていた。だがこうしてみると、並んでいる選手たちは引き締まった体型の少女が多い。年も、自分とたいして違わないように見える。いや、女子プロレスラーは義務教育終了後すぐ入門するケースが多いと聞いたから、もしかしたらこの中には自分より年下の選手もいるのかもしれない。
 全員がリングの上に揃うと、ひときわ艶やかな選手が進み出てマイクをとり、会場に向けて挨拶を始めた。
「えらく美人だな。あれもレスラーか?」
 朝比奈が聞くと、美香は憮然とした表情になった。
「パンサー理沙子だよ。新女のチャンピオン」
「……へ? チャンピオンはドラゴンなんとかなんだろ?」
「『ドラゴン藤子』だってば。……藤子さんはもう引退しちゃったよ。背中傷めて、もうプロレスは無理だって」
 そういえば前に美香がそんな話をしてしょんぼりしていたような気がする。悪いことを聞いたかもしれない。肩をすくめ、朝比奈はテレビに視線を戻した。
 全選手が引き上げてしばらくすると、会場の照明が暗くなった。闇の中に、ピンスポットを浴びたリングがほの白く浮かび上がる。いよいよ試合が始まるらしい。
 会場内にビートの効いた曲が流れた。カメラが、花道を歩いてくる気の強そうな顔をしたショートヘアの選手をとらえる。一礼してリングに上がると、彼女はロープを握って軽く跳ね始めた。
 続いて軽やかなメロディーに乗って、今度は童顔で小柄な選手が駆け込んできた。会場から一際大きな歓声が上がる。
「人気あんのか、こいつ?」
「あー、先に入ってきたのはワールドの選手で、こっちは新女の選手だからだよ。新女の会場だから新女ファンの方が多いの」
「へぇ……」
「ちなみに、先に入ってきたのが林洋子、後の方が堀ちゃんね。堀咲恵ちゃん」
 美香が解説してくれた。とはいえ、選手の名前をまったく知らない朝比奈にはちんぷんかんぷんである。
 ゴングが鳴ると、2人の選手は軽くステップを踏みながらお互いの出方を窺い、リングの中央をぐるぐると回り始めた。
 先に仕掛けたのはショートヘアの選手だった。かん高い声を張り上げて童顔の選手に殴りかかり、肩を掴んで続けざまに膝を入れる。身体を二つに折る童顔。ショートヘアはさらに相手の腕を掴んでロープへと走らせ、跳ね返ってきた相手の腹にもう一発膝を食い込ませる。思わず童顔の選手が苦痛の表情を浮かべ、腹を抱えて倒れ込んだ。
「……んだよ、ちっこい方、弱いじゃねーか」
「まだ始まったばかりだってばー。見てて、堀ちゃんもやり返すから」
 妹の言葉が終わらないうちに、ショートヘアの選手が童顔の髪を掴んで引き摺り起こした。奇声をあげつつ、もう一度逆方向のロープへと振る。が、今度は思うようにはいかなかった。童顔の選手は相手の膝をくぐり抜け、自ら対面のロープに走ったかと思うと、鮮やかな跳び蹴りをきめてみせたのだ。派手に吹っ飛ぶショートヘア。
「――お!」
「ね?」
 その後も二人は攻守ところを変えつつ技を繰り出し合っていた。
 ショートヘアが相手の髪を掴んで放り投げれば、童顔もすぐさま起きあがってくるりと体勢を入れ替え、相手を抑え込む。すかさずレフリーがカウントをとりに入り、ショートヘアはあわてて飛び跳ねてフォールを返した。
 ――女子プロレス?
 ……その光景を観ているうちに。
 ふと、朝比奈の脳裏に、昼間の霧島との会話が甦ってきた。
 
 
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プロレスの試合シーンは初めて書きましたが、難しいですね……。技の流れとか、動きの描写とか、書いてみるとどう書けばいいかわからないことだらけで迷いまくり。ちょっと他の方のSS読んで描写の勉強してこなければ。
 
 
後、旧作の正史では新女とワールドの対抗戦は菊池世代入門後なんですが、このお話では2~3年ほど前倒しになってます。(この試合の時点では菊池世代どころか、祐希子さん世代もまだ入門してません。堀さん・伊集院さんが一番の新人です)
また、林さんはゲームによっては新女所属&祐希子さん世代でもあるらしいんですが、ワールド側の人数があまりに少なかったので(^^;、ワールドの選手として出演していただきました。
 
 
 

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