« 二次商品って何でしょうねー | トップページ | ヘビーな大会 »

2009-05-02

「タイトル未定な朝比奈の物語」(仮題) 4回目

ちょっと間が空きましたが、朝比奈のお話の4回目です。前回の分はこちらから。
 
では、「続きを読む」からどうぞ。

 
------------------------------------------------------------------
 
 
 あの後。
 店に現れた霧島は、朝比奈に向かってこう切り出したのだ。――女子プロレスをやってみる気はないか、と。
 驚く朝比奈と真里に、霧島は説明した。
 彼女は今、大阪でプロレスラーをやっているのだという。団体の名前は「ワールド女子プロレス」。新日本女子プロレスに次ぐ老舗の団体である。
 だが、華のあるスター選手を何人も抱え、業界の盟主として女子プロレスブームを牽引している新女に対し、ワールド女子は今ひとつブレイクしきれず、一部のマニア向けの団体というイメージからなかなか脱することができずにいるらしい。
 そして先日、フロントと衝突した選手たちが揃って団体から離脱してしまったのだ。
 残った選手は新人まで含めても両手の指に満たない。新たな入門者を補充しようにも、めぼしい新人はみな新日本女子プロレスの方に流れてしまう始末である。
 ――なぁ、誰か、うちに来てくれそうな知り合いとかおれへんか?
 冗談めかした社長のつぶやきは、しかし切実な響きを帯びていた。その言葉を耳にした時、霧島はふと故郷の後輩のことを思い出したのだという。
 ――それってつまりぃ、選手が足りなくなったから穴埋めに優香をスカウトに来たってことですか?
 身も蓋もない真里の言葉に、霧島は苦笑を浮かべた。
 ――率直に言えばそういうことになるな。
 ――だ、だけどよ、霧島さん!
 あわてて朝比奈は口を挟んだ。
 ワールド女子プロレスの事情はわかった。だが、なぜそれで自分に声がかかるのだろう。自分は女子プロレスなど見たこともない。自分が柔道や空手の選手だったというならまだわかるが、そのような経験も無いときている。
 だが、霧島は首を振った。
 ――知識の有無は問題ではない。格闘技の経験も……有れば有るにこしたことはないが、別に無ければプロレスはできないというものでもない。
 ――はぁ……。
 そういうものなのだろうか。しかし、だとしても何故自分が?
 隣で真里が首をかしげた。
 ――まさかぁ、実は優香にはものすごーい素質があってそれを霧島さんが見出した、なーんてこと……無いですよねぇ?
 ――お前なぁ……漫画じゃねーんだぞ。
 ――わかってるってばぁ。だから、そんなこと無いですよねって言ってるじゃない。
 朝比奈に睨まれ、唇を尖らせる真里。
 だが、霧島は真面目な顔でうなずいた。
 ――素質があるかどうかは私にはわからんな。だが……素材としては、悪くはない。
 ――……素材?
 思わず真里が朝比奈を見遣った。その視線につられ、朝比奈も自分の身体を見下ろした。素材って…………………………どこがだ?
 後輩たちの反応がおかしかったのだろう、霧島が口元をほころばせた。
 ――そうじゃない。その体格だよ。おまえ、今、身長いくつだ。
 ――へ……174か5か……そのくらいっすかね。
 宮城さん並だな、とつぶやき、霧島は続けた。
 ――女子プロレスには体重による階級は無い。もちろん体重がすべてではないが、それでもプロレスをする上で体格に優れた選手は有利だ。それにおまえは運動能力も低くはない。腕力もある方だったろう。
 ――はぁ……。
 曖昧な表情で朝比奈はもう一度自分の身体を見下ろした。
 そういうことなら納得いくような気はした。
 確かに、自分は女にしてはかなり大柄な方だ。昔からクラスで列を作る時には最後尾が定位置だった。しかも、単に背が高いだけではなく、骨太でがっしりした体つきときている。子供の頃に近所の悪ガキどもと対等に喧嘩できたのはそのおかげでもあるだろう。
 自分ではよくわからないが、霧島がプロレスに向いていると言うのなら、そうなのかもしれない。
 しかし。
 ――ピンとこないという顔をしているな。
 笑みを含んだ霧島の声が耳に入り、朝比奈は首をすくめた。
 ――はぁ……すいません。
 何せ、これまでプロレスというものにはほとんど興味を持つことなく生きてきたのだ。向いている、素材として悪くないと言われれば悪い気はしないが、だからといってすぐに「やってみたい」と思えるはずもない。
 ――いや、謝ることじゃない。……今までプロレスを観たことは1回も無いのか?
 ――妹が女子プロレス好きなんで、TVで観てるのを横目で観たことはあるけど……その程度っす。
 ――そうか。なら、一度きちんと観てみろ。どんなものか知らないままでは判断もできまい。
 ワールド女子は月1回、新日本女子の方は毎週、試合がTVで放送されているという。それを観てみろと霧島は言った。
 そして、ぽつりと付け加えたのだ。
 ――もしかしたら、おまえもそこに……何か、探しているものを見つけるかもしれん。
 ――……へ?
 思わず朝比奈は問い返した。
 どういう意味だろう?
 だが霧島は、その問いには首を振り、たいした意味は無いとしか答えてくれなかったのである……。
 
 
------------------------------------------------------------------
 
 
 
しかし書いてて思ったけど、霧島さんの誘い方って、要約すれば「君、いい身体してるね! 女子プロレスに入らないかい?」ですよねぇ……。さすが、元自衛官志望。
 
 
 
 

|

« 二次商品って何でしょうねー | トップページ | ヘビーな大会 »

コメント

初めまして。Dolphinと申します。
全女ダッシュでの駅伝の参加ありがとうございます。私のブログ「カウント2.99からの逆転劇」で実況を担当させていただきましたが、拝見して頂けたでしょうか。いただけたら幸いです。

また、ワールドでの朝比奈さんがどうなっていくか楽しみです。
あと、こちらからリンクしてもよろしいでしょうか。

投稿: Dolphin | 2009-05-08 21:49

>Dolphin様
お返事遅くなりまして申し訳ありません。
駅伝の実況、お疲れ様でした。毎日楽しみに伺わせていただいてました♪
リンクの件ですが、もちろんOKです。こちらからも近いうちに貼らせていただきますね。朝比奈ストーリーも、ちょっと私用で止まってますが、そろそろ再開させたいと思います。
ではでは、今後ともよろしくお願いしますね。

投稿: 水瀬 | 2009-05-13 23:08

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 二次商品って何でしょうねー | トップページ | ヘビーな大会 »